iPhone 4デザイン改悪?の裏側にあるもの

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わずか1日だけど、iPhone4を外に持ち出して思ったのは、非常に持ちにくい、ということ。

幅は小さく、ゴツゴツしていて、角が手に当たるし、ツルツル滑る、という具合。

持ちやすさ、というのは、デザインの重要な一側面だと思うが、「持ちやすいデザイン」の観点では、iPhone3G/3GSから、明らかに後退している、と思う。

同じデザインチームが(多分)デザインしていて、なぜ、デザイン的に後退してしまったのだろうか。
持ちやすさを追求する事を忘れてしまったのだろうか。

おそらく、そうではないだろう。意図があるはず。



話しは変わるが、iPadを買って最初の1ヶ月は裸で使ってみて、それから以降は純正ケースに入れて使うようにしたところ、iPadの使い勝手が激変した。

ケースに入れることによって、滑りにくくなり、重さも軽く感じ、気軽に持ち歩ける様になった。
iPadの純正ケースは、後から対処法として出されたのではなく、明らかに一つの基準を示しているし、ケースを積極的に使う提案をしている。


iPadの次に発売されたiPhone4にも、ケースではないがバンパーが純正品として発売されている。

これも同じく、iPhone4は、ケース装着が前提として考えましたよ、というメッセージだろう。

視点を変えて、iPhone4の筐体サイズを見てみると、薄くなり、幅も小さくなっている。
3GSと同じサイズにして、バッテリー容量を増やす、という選択肢もあったはずだが、Appleはそうはしなかった。

なぜなら、やはりiPhone4は、ケースを前提として考えられたからではないか。

幅や厚みというのは、長さ方向と違って、握るという行為と直接関係してくる。
3GSまでは、ケース前提ではなかったために、裸の状態で、最適と思われるサイズでデザインしたはず。

しかし、3G発売後、ユーザーの多くがケースを付けてしまう、という状況になってしまった。

そこで、iPhone 4では、ケースを付けても人に最適なサイズにするために、ケースの厚み分、サイズを削って、本体をデザインしなおした、と思われる。

では、ケースを前提としたのは、なぜなのか。
直接的には、ユーザーがケースを付けてしまうから、だが、なぜユーザーはケースを付けてしまうのか。

Appleは、単一デザインのプロダクトから始めて、普及と共に、多色展開をする、というクセがある。いや、あった。

これは、T型フォードとシボレーの展開に倣ったものと思われるが、多色展開そのものは、ユーザーが増えた時に、多様化したニーズに応える、という作戦。

沢山の人が同じデザインのものを持ち始めると、人と違う物を持ちたい、という気持ちは必ず出てくる。この気持ちに対応する一つの策が、多色展開。

iPhoneも、単一デザインでスタートして、2色まででたところで、ケース市場が盛り上がった。
多様化したニーズに対して、小さなサードパーティが、対応してニーズを吸収する世界を作ってしまった。

iPhoneオリジナルの筐体のサイズ、デザインということでは、Appleの意に反した形だろうが、一方で、多色展開は、少品種でスケール展開するAppleの基本戦術とぶつかるため、できれば避けたかったのであろう。

AppStoreでの成功と同じく、外観ケースの分野でも、このチャンスをさらに上手く活かそうと、Appleは腹をくくって、ケース前提でiPhoneをデザインをし直したのではないか。

基本のデザインに手は抜いたと思われたくはないだろうが、沢山の人の個性表現の欲求を味方に付けたほうが、iPhone自体の普及は、ストップしない。

この視点に立って、iPhone4のゴツゴツ感を考える。
iPhone 4を握って、ゴツゴツを感じる、というのは、ケースを付ける、ということをアフォードするようにデザインしている、と読み取れる。
有りていに言えば、ケースを付けたくなるように、わざと持ちにくくしている、ということ。

持って滑らかに違和感なくデザインできる人達なので、持ったときに、あえて違和感を持つようにもデザインできる、ということ。

ガラスとステンレスによる高い質感も、保護したいという気持ちや、指紋などで汚れることから防ぎたい、という気持ち、ケースを付けたくなる気持ちを後押ししているとも考えられる。

さらにアンテナ問題。
ユーザーがケースを使ってしまうと、アンテナが本体表皮から遠ざかって、感度が悪くなってしまう可能性がある。
ケース前提であれば、ケースの一枚内側の一番外側にアンテナを配した方が有利、という考えもあっただろう。

そうやって考えると、iPhone4は、質感の高いデザインとも見えるが、少し引いてみると、作りかけのパーツにも見える。
装甲を取っ払ってメンテナンス中のモビルスーツと言ってもいいかもしれない。

日本のケータイに、着せ替えケータイ、というのがあるが、あれの外装を外した状態、というのはもっと直接的か。


アンテナ問題で、ケースを付けろ、とジョブズが言ったとか言わないとか、話題になっていたが、言ったとすれば、上のような理由で、結構ホンネトークな気がする。

以前、iPhoneは裸で持つのが美しい、とジョブズが言った事は有名だが、それはそのときは確かにそうだったのだろう。しかし、方向を転換した。ウェブアプリしか認めなかった状況を一転して、AppStoreをここまで育てたのと同じ方向転換。iPhoneというプラットフォームを提供して、サードパーティに外観デザインにかんするニーズを埋めてもらおう、という作戦。

iPhone 4がケース前提なら、バンパー無償配布すべきという人がいるかもしれない。

でもバンパーを配ってしまうと、せっかく育ったサードパーティが死んでしまう。
外観の無個性化や、飽きという問題にも対処できない。
だから、政府から命令されたりしない限り、配ったりはしないし、デザインの変更もしないだろう。
それがiPhoneプラットフォームを長寿命化させ、普及を促進する原動力のひとつなのだから。

外観デザインの良さを標榜しながら、隠されることを前提にもデザインしていくしたたかさこそが、Appleの真の強さではないか。


というわけで、iPhone 4は、さっさとケースを付けるに限る、という結論。